神奈川歯科大学、齋藤 滋教授が弥生時代から現代までの食事を復元して、
それを女子大生に食べさせた調査報告があります。 それによると、弥生時代は蛤のうし
お汁・鮎の塩焼・ながいもの煮物・かわはぎの干物・もち玄米のおこわ、
鎌倉時代はいわしの丸干し・里芋とわかめの味噌汁・梅干・玄米のおこわ、
昭和十年代は大豆の味噌炒め・野菜の味噌汁・大根と人参の煮物・たくわん・
麦飯となっています。 つまり、日本人は三千年以上にわたって、
先祖代々同じたべものを食べ続けてきたことになります。 ところが、
いまの食事はコーンスープ・ハンバーグ・スパゲティ・ポテトサラダ・
プリン・パンと様変わりしました。
三千年以上にわたって培われた日本の伝統食文化が、
たった六十年で急激に欧米化してしまったのです。
このあまりにも急激な変化に、
日本人の身体がついていくことができず、終戦前には考えられなかったさまざまな心身
(とくに心)
の健康被害を生み出したと断言することができるでしょう。 ポイントは二点あります。
ひとつは米(ごはん)の摂取量が大幅に減ったことです。
鎌倉時代の武将は一日に玄米五合を食べていたといいます。昭和十年代の私どもは一日二合の米を口にしていました。
(終戦直前は飢饉状態でとても無理でしたが・・・
) さらに大きな問題は動物性食品(鳥獣肉類・卵類・牛乳・
乳製品など)の異常としかいえない過剰摂取です。いまの子どもたちはごはんよりも動物性食品の方を多く食べさせられているのです。
いわば有史以来の重大な危機を迎えているといえます。 この悲惨な現状をもとに戻すのは容易ではありません。
しかしながら、それに歯止めをかけ、優れた日本の伝統食文化を取り戻すことが、
私どもに課せられた責務と考えて、毎日の診療に従事いたしております。 |