「この物、児童のわきて好む味なれば、富たる家に此れにてつくれるものたゆることなし。児の腹立てなきさけべば此れを与えて心をとる。(中略)けだし、児の病、疳、驚風、疳瘡など、みな砂糖の溢潤よりおこると知るべし。
一家のあるじならば、一家の内に禁をたてて砂糖を門内にいれるべからず。一荘のあるじならば一荘を禁ずべし。一国のあるじならば一国を禁ずべし」
これは中井履軒(一七三二〜一八一七年)の著者「老婆心」の中の一説です。江戸時代の先達の意見の明に敬意を捧げずにはいられません。
ひるがえって、わが国の現状はどうでしょうか。富たる家ばかりでなく、ほとんどの家に砂糖が大量に入り込んでしまっています。
なぜ、砂糖を体内にとり入れてはいけないのでしょうか。それは砂糖が(C6H12O5)2で表される化学物質(クスリ)であり、その中でも摂取量が多いために、心身の健康におよぼす悪影響が大きいからです。それを、同じ化学物質である医薬品や食品添加物と比較してみましょう。
医薬品は健康を損ねなければ服用する必要はありません。一方、砂糖はいまや日本中の多くの家庭で、食事を通じて年間に一五〇〇種類二四kgが身体にとり入れられています。
砂糖はそれ一種類だけでそれ以上の量が摂取されています。
ひとの場合、これだけ大量の化学物質が身体に入ってしまうと、ひとにとってもっとも大切な臓器である脳に大きな影響が及びます。
近年、かつては考えられなかったような異常行動や犯罪が頻発している原因のひとつに砂糖の過剰摂取があることを親として心得ておくべきです。その防止のためにも、砂糖の濫用にしっかりと歯止めをかけていただきたいものです。 |