社会活動をする場合、人間関係を円滑にする上で、気配りは大変重要な要因になると思います。
しかし、すべてのことについて気配りをすればそれでよいというものでもありません。意外に思われるかもしれませんが、私は健康、その対極にある病気に関しては、気配りはむしろマイナスの要因になると考えています。
五十年あまりの診療生活を通じて、健康や病気に気配りをしている人ほど病気になりやすい傾向を持っています。逆に、健康や病気に無頓着な人ほど病気になりにくく、病気になった場合も予後がよいのです。
病気に気配りしすぎるということは、それにこだわりや意識を持ちすぎることになり、結果的に健康を損ねたり、病気を招き寄せたりするのではないかと思います。
基本的には、ひとには本来「病いというものはない」と私は考えています。そうしたプラス思考が病気というマイナス思考の侵入を防いでくれるのだと思います。そうした意味で、病気という知識をもたずに生活の知恵を身につけることが肝要です。
同じことを、聖路加病院内科医の日野原重明さんは「知識は健康にしない」という言葉でいい表しておられます。もちろん、日野原さんは知識が不要といわれているのではなく、生活の中に日本人が本来持っているさまざまな知恵をとり入れていくことが大切なのだといっているのです。
いまや、かつては考えられなかったほどに健康や病気の情報が氾濫しています。そうした現状の中で、それに気配りをしないのは難しいことだとは思います。しかし、そうしたあまたの情報から解き放されて、こだわりのない生活を送ってみてください。
それが、病気にならず、健康に暮らすための要諦であることを実感していただけるものと信じています。 |