戦前の日本人が持っていた考え方の中でうすれたもののひとつに、
共存、共生があります。動物、植物にかかわらず、
全ての生物は支えあって共に生きているとする考え方です。 こうした考えをおしすすめてゆくと、
生き物に限らず、水や土や空気、山や川や海も生きていることになりまさんせんそうもく
す。
それをおしひろめれば「山川草木しっかいじょうぶつ悉皆成仏」になるのです。 こうした考え方が定着していた頃には、自分のまわりの森羅万象に心を配って感謝し、それを大切にしてきました。
終戦後、誤った自己中心的な考え方から、
永年にわたって培ってきた自然を破壊することに何の痛痒も感じなくなってしまっているのが現状です。
「自分さえよければよい、自分の家族さえよければよい、
日本人さえよければよい、人間さえよければよい」として周囲を顧慮しない風潮が、
わずか六十年間で、
終戦前には考えられないほどの環境破壊を生み出し、自らの生活をうるほいのないものにしてしまっています。 私が共感を覚える民族にネイティブ・アメリカンがあります。
彼らは「すべての星は生きている」当然「地球も生きている」
との考え方に基ずいて毎日の生活を送っています。 したがって「
母なる母体の内臓である鉱物を掘り出してはいけない」
として石油・石炭なども掘り出してはいないのです。彼らが何かを議決するときには、全ての参加者が
「これから決められることが七代先の子孫にどのような影響を及ぼすか」
を熟慮した上で議決するといいます。 ひるがえってわが国の現状をみる時、寒心に耐えません。
たった六十年前までは日本人も持っていた共存、共生の思想を取り戻し、
長期的な展望にたって汚染されつつあるわが国の現状に歯止めをかけ、
未来を少しでも明るいものにしていただきたいと思います。 |